アグネスチャンが住んでいたところ!≪八月十七日≫ ―爾― 今日の根城を確保して、午後からはタイ領事館を探しに出かけ る。 タイ国のビザを取る為だ。 根城の近くには、マカオ行きフェリー乗り場があり、海沿いに東に進 むとスターフェリー乗り場、そこから東へ少し行くと日本領事館がある。 スターフェリー近くまで歩いた後、大丸行きのバスに乗り込ん だ。 料金は、30¢(≒18円)。 イギリス式の二階建てバスだ。 二階が喫煙席で一階が禁煙席となっていて、二階では立ち席が許され ていない。 地元の人たちに聞きながら、やっとの事で、ビルの三階にタイ 領事館を見つけることができたのだが、なんと事務所は午前中で終了してい た。 ここで日本と違うのがタイ領事館。 中に居た、女性事務員に、飛行機が20日に出ることや、ビザを取るの に時間がかかる事などを十分に訴えると、OKの返事が帰って来たではない か。 事務員の柔軟な対応により、とにもかくにもビザを取ると言う大事が 終了した事になる。 日本だとこうはいかない・・・・・だろう!! * 今日一日の仕事が終わり、どこへ行くともなく市電に乗り込ん だ。 ところが、ほんの僅か山手のほうへ走ったかと思うと、もうそこが終 点。 そこからバスに乗り換えて見たのだが、またもすぐ近くで折り返し、 全くついていない。 仕方なくバスを降りる。 会長 「山の上まで登ってみようぜ!」 会長の声に、皆坂道を走り始めた。 しかし、暑い陽ざしは我々の足をすぐ止める事になる。 冷たい飲み物で抑えていた汗も、ここぞとばかりにいっぺんに噴出し てきた。 会長 「この山さえ越えれば、あのアグネスチャンが住ん でいると言う、アバディ-ンの住宅街が見える ぞ!」 と言う、本音とも冗談ともつかない会長の言葉に、正気とは思えない ほどのダッシュで山登りを再開した。 どのくらい走っただろうか、どのくらい歩いただろうか、どこ まで行っても山頂は近づいてこない。 さすがの我々も、進路を変更し横道にそれてしまった。 汗を出し切った身体が、風に触れて心地よい。 しかし、喉はカラカラだ。 鉄臣 「誰がこんなしんどいこと、思いついたん!」 会長 「どや!気持ち良いやろ!」 文句を言いながら歩くみんなの顔は笑っている。 なんとも爽快な山登りである。 我々は今、この眼下に広がる香港を手中におさめた気がした。 給油所を見つけるが、コーラは置いてなくて、すぐ近くのスポーツセ ンター(HKCC)内に入り込み、冷水を飲み干し身体を休めた後、満員の バスに乗り込んだ。 鉄臣 「俺ら、くっさいやろなー!」 バスの終点は、スターフェリー近くにあるバスターミナルだっ た。 足を引きずりながら旅社に戻ると、屋台へ直行し昼食を済ませると、 皆疲れていたのだろうそのままベッドに倒れこんだ。 二三時間眠っただろうか、目を覚ますともう外は闇が支配して いて、甲高い声が聞こえてきた。 横で会長はなにやら原稿を書いている。 会長 「おっ!起きたか!」 俺 「和智さん、寝なかったんですか?」 会長 「頼まれている原稿があってな!」 一時間ほど雑談して、10:00夕食のため下へ降りただけ で、今日の一日が終わろうとしていた。 ベッドの上にシュラフを敷き、腹ばいになり日本の事を想い出す。 さすがに夜ともなると、昼間の暑さが嘘のような涼しさだ。 日本に残してきた彼女?に手紙を書きながら夜が更けていった。 |